IOII architects

田圃の枯山水

田圃にガラスの四畳半をそっと置き、稲の成長にあわせて上下させ、建築が田圃に寄り添うように佇まう。見渡す限りひろがる田圃が「にわ」になるという試み。

Turning rice fields into garden

田圃の枯山水

種別

工作物

用途

アート

構造

yAt構造設計事務所

写真

阿野太一

敷地は、新潟県十日町市・中里。日本の食を支える米どころで、信濃川に沿って田圃が広がる。その田圃の一角に、ガラスでつくった四畳半の小さな建築を、そっと浮かべるように置いた。

設置したのは、大地の芸術祭期間中の夏の2か月間である。
この間、稲は日ごとに背を伸ばし、花をつけ、やがて実を結んだ。蛙が跳ねる季節が過ぎると、米の匂いとともにトンボが舞った。黄緑から濃い緑へ、そして稲が頭を垂れるころには金色へと移ろい、風景そのものがゆっくりと変わっていった。

訪れた人々は、田圃の上に浮かんだ四畳半に寝そべり、佇み、それぞれの仕方で田圃を眺めた。このとき田圃は、農地でも建築が置かれた敷地でもなく、一つの「にわ」となる。四畳半を浮かべ、まわり10メートル四方の稲を高さや向きを変えて作庭したことはきっかけにすぎない。むしろ見渡すかぎりの田圃全体が「にわ」として立ち現れる瞬間をそっと促したかった。

この風景をどう捉えるかを考えたとき、枯山水の庭のことが思い浮かんだ。
枯山水は水をもたずに石や小石によって水を表現する。田圃もまた、稲が実るころには水がないものの、稲面の奥に広大な水面がひそんでいるように思える。この「にわ」を田圃の枯山水と名付けた。水のないところに水を想像させる庭である。枯山水における小石は米に、石畳はあぜ道に、畳はガラスに、関守石や沓脱石はコンクリートに読み替えた。

こうした「にわ」の状態を実現するために、構造は次のように考えた。
稲面にそっと四畳半が置かれているような状態をつくるため、四畳半型のイゲタに組んだ鉄骨フレームを中央の4本脚で支え、稲の生長に合わせて高さが上下できる機構とした。また田圃への影響がないよう、基礎は打ち込まず、イゲタ状の基礎の面が浮力で均衡するようにした。

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