遠い家
中庭という透明な部屋が中央にある住宅。中庭に差しこむ光により、部屋の風景が透過したり反射したりしながら、すこし先の部屋を近くにも遠くにも感じる。





















far away home
遠い家
種別
新築
用途
住宅
延床面積
260
㎡
構造
坪井宏嗣構造設計事務所
写真
阿野 太一
敷地は区割が大きく低密度な住宅街にある。広さが感じられることと、木は使わないことが求められた。家という限られた空間の中に果てしない「遠さ」をつくることと、硬さと柔らかさが同居し朧げであることを考えた。13.7m×13.2mという正方形に近い平面の真ん中に、視覚的に透明な中庭を据えた。中庭という形式から連想される求心性や回遊性といった空間の性質よりも、むしろガラスに囲われて建築化された中庭が、外を囲う「ガラスの部屋」であり、住宅のなかの一部屋になっているようなあり方を意識した。今いる部屋のガラスごしに中庭があり、その奥のガラスごしに奥の部屋がある。
奥の部屋はガラスの物質感(不透明性)と反射や映りこみにより朧気になり、実際の距離以上にとても遠いものとなる。さらに、ガラスや金属扉などの反射で、水平方向に広がる明るさの帯ができ、それと対比的に、コンクリートの深い梁と天井スラブが光を吸収して暗がりの帯もできる。家の中に、谷崎潤一郎の陰翳礼讃に描かれるような陰翳があり、その陰翳によってより明るさがいっそう晴れやかに立ち上がる。
構造は、耐力壁付きのRCラーメン構造とし、1、2階で梁をずらして架け渡し、スパンが大きい部分には梁をうける形で114Φの丸型鋼管を11本加えている。梁のずれと丸型鋼管の群が空間に動きを与え、ラーメン構造のリジッドな空気感とコンクリートの量塊性がともに消えて透明になる。丸型鋼管群を南北方向の対角線上におき、そのエンドであるコーナーには柱・壁をぬいている。そのことにより、周囲へと視界がとおる南北により透きとおるようにしている。RC造の特徴として、構造をそのまま現すことができ、剥き出しで(無垢で)覆いがない(隠されていない)という意味での透明感がある。コンクリートの型枠には木目がつよく転写される針葉樹型枠を用い、木の気配と痕跡を残すこととした。針葉樹合板の模様が面として反復し、カーテンの二重ドレープと手摺子の縦ラインも繊細に反復し、それらがガラスの反射と相まって、水平に連鎖してなお更透明感と奥行きを増していく。
フロートガラスの鉄分に起因する緑の色味を建築的な素材として扱うため、インテリアには有彩色をつかっていない。また中庭の中央には、柱と同径のまっすぐな一本立ちのユリノキを植えた。このガラスの緑色が際立つことと、木と柱を等価に扱うことにより、中庭がガラスの部屋である意図を示した。ずれながら架かるコンクリートの梁は、平面形状を1階で27、2階で22の小空間に分節している。この分節された小空間が連続しつつ、梁下に丸型鋼管の鉄骨柱が現れては場をつないだり、やや隔てたりしながら、ある部屋からある部屋へと誘われる。部屋から部屋へと隅々までつながりつづける連続感に対して、中庭(ガラスの部屋)は自由に行けない場所でもある。行けない存在感が、家の中にまた概念的な遠さをもたらす。
夕方になると、外光より室内の灯りが勝り、中庭越しの奥の部屋ははっきり見えるようになる。徐々に全体がワンルームとして感じられ、実際の寸法どおりの家の広さ感が取りもどされる。夕食を囲う頃には、昼間は遠かった住宅の隅々が近く感じられ、それと同時に家族の距離も近づいていく。
奥の部屋はガラスの物質感(不透明性)と反射や映りこみにより朧気になり、実際の距離以上にとても遠いものとなる。さらに、ガラスや金属扉などの反射で、水平方向に広がる明るさの帯ができ、それと対比的に、コンクリートの深い梁と天井スラブが光を吸収して暗がりの帯もできる。家の中に、谷崎潤一郎の陰翳礼讃に描かれるような陰翳があり、その陰翳によってより明るさがいっそう晴れやかに立ち上がる。
構造は、耐力壁付きのRCラーメン構造とし、1、2階で梁をずらして架け渡し、スパンが大きい部分には梁をうける形で114Φの丸型鋼管を11本加えている。梁のずれと丸型鋼管の群が空間に動きを与え、ラーメン構造のリジッドな空気感とコンクリートの量塊性がともに消えて透明になる。丸型鋼管群を南北方向の対角線上におき、そのエンドであるコーナーには柱・壁をぬいている。そのことにより、周囲へと視界がとおる南北により透きとおるようにしている。RC造の特徴として、構造をそのまま現すことができ、剥き出しで(無垢で)覆いがない(隠されていない)という意味での透明感がある。コンクリートの型枠には木目がつよく転写される針葉樹型枠を用い、木の気配と痕跡を残すこととした。針葉樹合板の模様が面として反復し、カーテンの二重ドレープと手摺子の縦ラインも繊細に反復し、それらがガラスの反射と相まって、水平に連鎖してなお更透明感と奥行きを増していく。
フロートガラスの鉄分に起因する緑の色味を建築的な素材として扱うため、インテリアには有彩色をつかっていない。また中庭の中央には、柱と同径のまっすぐな一本立ちのユリノキを植えた。このガラスの緑色が際立つことと、木と柱を等価に扱うことにより、中庭がガラスの部屋である意図を示した。ずれながら架かるコンクリートの梁は、平面形状を1階で27、2階で22の小空間に分節している。この分節された小空間が連続しつつ、梁下に丸型鋼管の鉄骨柱が現れては場をつないだり、やや隔てたりしながら、ある部屋からある部屋へと誘われる。部屋から部屋へと隅々までつながりつづける連続感に対して、中庭(ガラスの部屋)は自由に行けない場所でもある。行けない存在感が、家の中にまた概念的な遠さをもたらす。
夕方になると、外光より室内の灯りが勝り、中庭越しの奥の部屋ははっきり見えるようになる。徐々に全体がワンルームとして感じられ、実際の寸法どおりの家の広さ感が取りもどされる。夕食を囲う頃には、昼間は遠かった住宅の隅々が近く感じられ、それと同時に家族の距離も近づいていく。
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